ドゥルパドとは ―メロディとリズム~ラーガとターラ―

うたうヨーガ、うたう瞑想、ドゥルパド。

メロディとリズム ~ ラーガとターラ

インドの古典音楽は南も北も、メロディ面は「ラーガ」、リズム面は「ターラ」で成り立っています。基本的に北インド古典音楽は即興で演奏されるのが常ですが、南ではラーガやターラに則って作曲された楽曲というものも多いようです。

ラーガとは「旋律型」や「旋法」と訳されるメロディの枠組みで、実にたくさんのラーガが あり、それぞれに固有の名前や情感、北インドでは演奏されるべき時間帯が決まっています。 その枠組みとは、使われるドレミファソラシド(インドではサレガマパダニサ)の組み合わせ(音階)と音階内の順列、そのラーガ固有のパターン、音使いの規則などです。この枠組みに則って即興でラーガを表現していきますと、自ずからそこにそのラーガの景色が立ち現れます。

インド音楽は西洋音楽とは違って、和音やコード、転調などの概念はありません。その代わりその和音の発展の歴史から、複雑な旋律を失ってきた西洋音楽とは違って、音階はたくさん存在します。4音階のラーガから7音階のものまであり、半音や西洋音楽にはない微分音まで合わせると、実に無数の音階があることになります。

ラーガは、ドゥルパド・カヤール・その他の様式に共通するものですが、様式や流派によって若干の違いが見られます。ドゥルパドは一番古い様式ですので、古来からのラーガの規則 がよく伝えられています。ラーガの規則は、新しい様式になればなるほど緩くなる傾向があります。またドゥルパドには4音階のラーガが伝えられていますが、これはとても古いものでカヤール以降の様式では4音階はありません。また、ラーガは新しく作ることもできます。

ターラはリズム周期で様々な種類があり、ラーガと同じように新たに作ることも可能です。ターラに関しては、音楽の様式によって使われるターラが違います。ドゥルパドでは、チョウタール(12拍子)、ダマール(14拍子)、ジャプタール(10拍子)、ティーヴラタール(7拍)、スールタール(速い10拍子)が伝統的なターラです。カヤール様式のターラも数種類ありますが、カヤールで最も一般的な16拍子のティーンタールがドゥルパド演奏に使われることはありません。

北インドの打楽器といえばタブラが有名ですが、ドゥルパド演奏の打楽器は、パカーワジ(別名ムリダング)という両面太鼓が使われます。これはタブラの前身にあたり、神話の中に登場するほど古い起源の打楽器(ガネーシャ神の楽器)です。これらの打楽器は、伴奏に使われるだけでなく、ドゥルパド・カヤールの双方に太鼓ソロという演目があります。

インドのリズムには、ターラとターラのない拍だけのものがあります。ドゥルパドに限らず北インドのラーガ演奏は、最初のターラのないアーラープと呼ばれる部分(太鼓の伴奏はない)と、ターラに則った部分(打楽器の伴奏がある)の二構成で成り立ちます。