ドゥルパドとは ―はじめに―

うたうヨーガ、うたう瞑想、ドゥルパド。

はじめに

ドゥルパドとは、北インドの古典音楽の一様式です。

インドの古典音楽は大別すると南のカルナータカ体系、北のヒンドゥスタニ体系の二つからなります。ドゥルパドは数種類ある他の北インド様式の母体となるもので、進化し続ける生きた古典音楽様式としては南北インドを通じて一番古いものです。 南インドのカルナータカ音楽も起源が古いと言われていますが、一度廃れてしまったあとで18世紀にティヤーガラージャが文献から掘り起こしたものなので、継続的という意味ではドゥルパドが断然古いといえます。

ドゥルパドは三種のヨーガを土台としているため、その瞑想的なスタイルゆえにインドの一般民衆には受け入れられず、20世紀のインド独立にともなう藩王国制度廃止とともにマハラジャというパトロンを失って消滅の危機に瀕しました。しかしながら、一部の人々の揺るぎないサポートと逆にその瞑想的なスタイルゆえに、先進国の精神世界を求める人々に再発見されたことで消滅の危機を免れました。

現代はドゥルパドのリバイバルの時代であり、インドのみならず西欧諸国や日本などのアジアの国々でもドゥルパド愛好家やドゥルパドを学ぶ者が増えて参りました。その背景には世界中に拡がりを見せているヨーガブームもあります。ドゥルパドはいわば一番古くて一番新しい音楽、そして単にインドの民族音楽という枠には 収まらないユニバーサルな音楽なのです。

ちなみにインド音楽といえば、シタール(弦楽器)やタブラ(打楽器)、サントゥール(百弦琴)、バーンスリー(横笛)などが知られています。近年では世界に通用する日本人奏者も増え、日本における知名度も上がって来ました。 しかし、これらの楽器はカヤール(またはキャール)様式という現代古典様式で演奏される楽器です。このカヤール様式の母体となったのがドゥルパドです。カヤール様式は、インドのドゥルパドとペルシア音楽が融合して登場した宮廷音楽の様式です。出発点が精神修養のための音楽であり、純粋にインド起源の音楽であるドゥルパドとは趣が異なるのです。

“Music for Self-Realization” 字幕:谷口ユキ